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5/22(水)世阿弥「夏」「敷島」復曲・試演会

5/22(水)観世能楽堂にて、 世阿弥生誕650年記念シンポジウムの連動企画として 特別講演、試演会が開催されます。

●復曲特別試演会 観世宗家、観世清和師による 『四季祝言』「夏」、『五音』「敷島」
5/22(水) 開演14:00~ 於観世能楽堂

入場は無料。往復はがきによる事前申込制です。
5/15までに必着。
他に高桑いづみ・落合博志両氏による解説があります。


両曲は能一番のように舞や演技を伴わない、純粋な声楽曲で、
いわゆる謡い物とよばれる曲。

主に貴人宅で開かれる宴会や祝い事で披露されました。
三代将軍足利義満、二条良基などに指名され、
田楽や曲舞や早歌など、他の芸能者よりひときわ抜きん出、
一層の支援を得るべく、世阿弥が精緻に技巧を
凝らした作品であろうと予測されます。

『四季祝言』「夏」は世阿弥の子、観世元能の『申楽談儀』にも
謡い方の技法が世阿弥の伝として収録されています。

以下、「夏」の記述を含む同書の「文字訛、節訛」についての段落を
全文現代語訳にてご紹介しましょう。

・文字訛、節訛

 「何に」という場合の「に」。てにをは等、助辞部分の訛が節訛である。「何」という言葉、すなわち自立語部分の訛が文字訛である。文字も、てにをはも、同じように思えようが訛の違いをわきまえねばなるまい。

 「松には風の音羽山※1」。観阿弥の「松には風」が訛っているといわれたが、喜阿弥の「秋の野風に※2誘はれて」の「野風」も訛っている。が、良い節訛はかえって面白いもの。さほど興を催さぬところに、節訛を置くべきではない。歌道でも「病に犯されぬ歌※3は苦しからず」というではないか。

 「小野小町は※4」の「は」は音が立ちすぎる。謡いながすべきである。
 「人の宿をば貸さばこそ※5」を句末で落すのは良くない。他ではこのようにもするが、ここは具合が悪いのだ。「貸さばこそ」の「ば」より落すべし。
 『夏の祝言』※6では「うけつぐ国」の「つぐ」を当たって謡うが、これも悪い。ここはまっすぐに謡うべし。
 「みかさの森※7」の「の」はまっすぐに謡う。しかし「一念弥陀仏」の  「念」をまっすぐ謡えば硬く聞こえる。ここは拍子に乗せなめらかに謡うがよかろう。
 またとくに、「神風やはしめ奉り※8」の「たて」には当たらず、まっすぐ謡うべきだ。
 「恵みひさし※9」、「ひさし」の文字訛は悪い。
 「春ごとに君を※10いはひて」、「はひて」と上音に上げるべからず。
 「夕べの風※11に誘はれ」、「夕べ」の「べ」から下げるのだ。
 「老翁いまだ※12」、「いまだ」をまっすぐ謡う。
 「げにや皆人は※13、六塵の境にまよひ」。「皆人は」の「は」を短くいい捨て、即座に「六塵」へ移るべし。また「六塵」を下音から謡ってはならぬ。
 「光源氏と名を※14呼べば」。この「と」は、律の調子でつける。前の文字と同声ではつけないのだ。南阿が面白いと褒めた節付けである。
 「くわんどう誤って※15」のところは、訛れば見物衆が聞き取れぬ。喜阿などは達者にまかせ時々訛ったところだが、真似をするものではない。
 「公光と申す者なり※16」の「者なり」は言い放つがよい。

※1 松には風の音羽山 『由良湊』クセ、アゲハ前の句。
※2 秋の野風に 曲不明。喜阿弥の曲か。
※3 病に犯されぬ歌 「病にをかされぬほどの歌になりぬれば」(藤原定家『毎月抄』)。歌道の技法上、欠点があっても誰もが認める秀歌・名歌には疵とはならない。むしろ欠点がより面白く感じられる、との意。
※4 小野小町は 乱曲『実方』クセにある。
※5 人の宿をば貸さばこそ 曲不明。
※6 『夏の祝言』 四季の祝言謡の一種。
※7 みかさの森 次の「一念弥陀仏」とともに、廃曲『笠卒塔婆』のクセの文句。
※8 神風やはしめ奉り 曲不詳。
※9 恵みひさし 『鵜羽』、ロンギ前の句。
※10 春ごとに君を 『雪山』(謡い物)の上歌の句。
※11 夕べの風 『江口』、クセの文句。
※12 老翁いまだ 『白鬚』のクセにある。
※13 げにや皆人は 『江口』のクセ。
※14 光源氏と名を 『須磨源氏』のクセ。
※15 くわんどう誤って 『雲雀山』のクセ。
※16 公光と申す者なり 『雲林院』(世阿弥自筆本)、ワキ名乗りにある。

(『申楽談儀』現代語訳 水野聡 能文社2013年4月)

2013年04月28日 18:28

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