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禅と茶道

茶道と禅との関係を、はじめて茶道史を学ぶ方への便宜として簡略にとりまとめてみました。ご興味をもたれましたら、ぜひ【言の葉庵】茶道史関連記事もご参照してみてください。

●禅と茶道 コンテンツ

1 茶道とは
2 茶道の歴史
3 千利休
4 禅と茶道

1 茶道とは

「茶湯(ちゃとう)」または「茶の湯」ともいった。茶道が成立した室町から戦国期にかけては数寄道、茶の道などという語も使っていたが、江戸時代初期には「茶道」と呼ばれた。海外へはJapanese tea ceremonyとして明治時代、岡倉天心が紹介し、以後その名前で定着している。
主客の一体感(一期一会)を旨とし、茶碗に始まる茶道具や茶室の床の間にかける禅語などの掛け物は個々の美術品である以上に全体を構成する要素として一体となり、茶事として進行する時間や場も含め総合芸術と目される。が、元来禅院茶礼をもととして発祥した茶道は、「侘び茶」と呼ばれ、禅の精神と深く結びつき人間修養の”道”として重んじられる芸道である。

室町時代、足利八代将軍義政の茶事顧問を勤めた、奈良の村田珠光を”侘び茶の開祖”とし、安土桃山時代にその流れを受けて、堺の武野紹鴎やその弟子千利休により構築、大成された。

現在日本では多くの茶道流派により伝承され発展しているが、主流となるのが千利休孫の千宗旦の流れを汲む以下(三千家と総称される)の各家である。

・表千家(おもてせんけ) 不審庵
・裏千家(うらせんけ) 今日庵 表千家より分派
・武者小路千家(むしゃのこうじせんけ) 官休庵 表千家より別派

他にも利休門弟が開いた、藪内流・南坊流・織部流・上田宗箇流・遠州流・有楽流、利休の長子、千道安の流れを汲む宗和流・石州流、利休以前の古流、珠光流・志野流などがある。

現在は、以下のような形で茶会が催されている。

・茶事
少人数の招待客を亭主が茶室に招きもてなす茶会。ひとつ椀で同じ濃茶を回して飲んでゆく。昼食として懐石を供してから茶をふるまう正午の茶事が最も基本的な形。他に、早朝の『暁の茶事』、夜更けの『夜咄しの会』、野外で行う『野点(のだて)』やテーブル・椅子を用いる『立礼(りゅうれい)』の茶事等がある。

・大寄せ
大寄せの茶会とは、多数の客を対象にして行う茶会である。催事の添え釜として行われることもあり、複数の茶席を設けて並行してもてなすこともある。客としては気軽な催し、亭主としては晴れがましい披露の場でもある。

・献茶
神社仏閣寺院の御前で行う茶事。貴人茶碗で神仏へ茶を奉じる。

・口切り
10月末〜11月初旬に家元で行う年初めの茶事、5月に摘んだ茶葉を茶壺にいれ、保管した壷の封を切り臼を廻して抹茶にする。年中行事としてもっとも重要な茶事となる。


2 茶道の歴史

・奈良時代 茶の伝来
渡来僧行基(668-749)により、「茶木を植う」(東大寺要録)

・鎌倉時代 茶礼の制定
1192年、栄西が宋より茶の苗木を持ち帰る。後、高山寺明恵が栂尾、宇治にて茶を栽培する。
1222年、宋から帰朝した道元の「永平清規」により、茶礼が制定される。
もっとも古い禅茶の儀礼として、今日も建仁寺にて「四頭茶会」が毎年開かれている。

・南北朝時代 茶の湯の誕生
1267年、崇国寺南浦紹明(大応国師)が宋より台子とその法式を伝える。
夢窓疎石(1275-1351)が台子を用い茶の湯を始める。

・室町時代 侘び茶の誕生
足利将軍同朋衆、能阿弥(1397-1471)が台子飾りと点茶方式を規定→東山流茶道
侘び茶の祖、村田珠光(1423-1502)が一休の印可を受け、禅を本とする侘び茶の湯を創始した。→「珠光、茶の湯の開山」(『山上宗二記』)

・安土桃山時代 侘び茶の大成
武野紹鴎(1502-1555)により、侘びの小座敷(草庵茶室)が完成。「茶禅一味」
千利休(1522-1591)により、侘び茶大成→今日の茶道が生まれる。平点前/極小茶室(国宝待庵)/国焼茶碗(楽焼)/竹の花入など


3 千利休

 大永二年(1522)- 天正十九年二月二十八日(1591年4月21日)は中世末期、安土桃山時代の茶人。侘び茶(草庵の茶)の完成者として知られる。
 父は田中与兵衛、母は月岑妙珎。父の「千」は氏であり、利休の名字は田中である、名は与四郎(與四郎)。のち、法名を宗易、抛筌斎(ほうせんさい)と号した。
広く知られた利休の名は堺の南宗寺の大林宗套から与えられた居士号で正親町天皇の勅許による。この名は『茶経』の作者陸羽(りくう)にちなんだものとの説もあるが、「名利既に休す」「利心休せよ」などの禅語から取られたものとも考えられている。後世、茶聖とも称せられた。

 和泉の国堺の商家(屋号「魚屋(ととや)」)の生まれ。若年より茶の湯に親しみ、17歳で北向道陳、ついで武野紹鴎に師事し、洛北紫野の大徳寺に参禅。
織田信長が堺を直轄地としたときに茶頭として召され、のち豊臣秀吉に仕えた。1585年の北野茶会を主催し、一時は秀吉の篤い信任を受けた。この時期、秀吉の正親町天皇への宮中献茶に奉仕し、居士号を許される。また北野大茶会の設営、黄金の茶室の設計などを行う一方、楽茶碗の製作・竹の花入の使用をはじめるなど、侘び茶の完成へと向かっていく。茶人としての名声の絶頂にあった利休だが、突然関白秀吉の勘気に触れ、切腹を命じられる。享年七十歳。

【利休の遺偈】
人生七十 力囲希咄 吾這寶剣 祖佛共殺
提ル我得具足の一ッ太刀 今此時ぞ天に抛


4 禅と茶道

【茶禅一味とは】
 茶道と禅宗では、その修行の形態や目的は異なるが、その根本は別物ではなく、人間形成の道という面から見れば、両者は不二一如である、とする説。

■三昧の境地
禅の基本は禅定三昧の行であり、茶道の重んずるところもまた点茶三昧にある。この三昧の境地に至って、はじめて茶の湯は禅に通じ真の茶となる。

■人間形成
茶道が到達しようとする理想的な人間像は、自利利他円満の菩薩であり、迷吾両忘※・吾了同未悟※の「ただの人」である点において禅のめざすものと等しい。

※迷吾両忘
迷いと悟り(吾)、あるいは生と死、苦と楽、愛と憎などの二元的な考えから脱却(忘れる)すること。
※吾了同未悟
悟りとは特別な何かを得ることではない。吾了同未悟は、悟り終えた後もいまだ悟らぬ前も何も変わらないことをいう。しかし禅修行による心の変化により外見は変わらずとも、内面の心のもちようには大きな違いがある。


■和敬清寂
茶道美の理念「侘び」が、禅芸術の理念「不近衝・簡素・枯高・自然・幽玄・脱俗・静寂」を統合したものといえよう。すなわち茶道の描く理想形「和敬清寂」は、禅の世界観、人生観に深く根ざしたものである。
利休の「和敬清寂」は、珠光の「謹啓清寂」をもとにしたものと伝えられる。


・茶人と禅宗(大徳寺)

京都紫野大徳寺は、嘉暦元年(1326)紫野に大燈国師が大徳庵を建てたことに始まる。
 茶道は栄西による茶種の輸入にはじまり、室町時代に村田珠光が、一休宗純に参禅して体得した禅の精神を持って、それまでの喫茶の諸方式を統合したものである。
 村田珠光以降、武野紹鴎、北向道陳、今井宗久、津田宗及、千利休等、各時代の代表的な茶匠は大徳寺と堺南宗寺の歴代住持に帰依し、参禅している。
茶道文化発展の精神的な支柱として、禅寺とりわけ大徳寺は、茶の湯と歴史的に深い結びつきを有している。


・茶書に見る茶禅一味

「茶禅一味」のことばは、室町より江戸時代にかけて、各時代を代表する茶人たちにより様々な表現で、繰り返し提唱されてきた。


・武野紹鴎
「料知す。茶味と禅味同じなること
 松風を吸い尽くして、こころいまだ汚れず」(紹鴎画への大林宗套の賛)

・千利休
「茶湯は禅宗より出でたるによって、僧の行を専らにする也。珠光紹鴎みな禅宗也」
「道陳、宗易は禅法を眼とす」(山上宗二記)

「小座敷の茶の湯は、第一に仏法をもって修行し、道を得ることである。家屋の立派さ、食事の珍味を楽しむことは俗世の習い。家は雨漏りせぬほど、食は飢えぬほどで足りるものである。これこそ仏の教え、茶の湯の本意である。水を運び、薪をとり、湯を沸かして茶を点てる。これを仏に供え、人にもほどこし、われも飲む。花を立て、香をたく。皆々仏祖の修行をなぞらえ学ぶことである。なおくわしくは、貴僧の悟りにて見つけるがよい」 (「南方録」覚書 2006能文社)

・千宗旦
「茶道は本来禅によるがゆえに禅と同じく言語道断であり、さらに示すべき道もない」
(茶話指月集)

・寂庵 宗澤
「茶意は即ち禅意也。故に禅意をおきて外に茶意なく、禅味を知らざれば茶味も知られず」(禅茶録)

    ↓
茶禅一味思想の確立

参照:言の葉庵HP「名言名句第十一回 山上宗二記 茶禅一味」
http://nobunsha.jp/meigen/post_47.html


☆本稿は、2013年4月期栄中日文化センター「禅と日本文化」第四回講座内容をもとに再構成したものです。

2013年07月12日 20:18

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