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ながながと川一筋や雪の原 凡兆『猿蓑』

言の葉庵ご来場のみなさま、メリー・クリスマス!
今年のイブは、日頃の行いがよろしかったのか、晴天&おそらく満天のきら星です。よかったよかった。全世界の善男善女に、まずはお祝い申し上げます。
さて、クリスマスといえばバブリーなカップルのゴージャスなイブもいいのですが、庵主のイメージとしては、救世軍による街頭の社会鍋。今はあまり見かけなくなりましたが、年末ホームレスの人に、熱々のカレーライスが無料で振舞われます。
奈良朝には「施餓鬼」、江戸期では「お救い米」とかいわれていました。困っている人、餓えている人を国が救ってくれる。

住むところもなく、着るものもない病気の老人に「自立しろ、働け」などと昔の日本人は言いませんでした。一時的なものですが、折々貧民救済のため国庫を開くのです。それが「お救い米」。「弱い人を、今そうじゃない人が助けようよ、見返りなしでね」。これを慈悲といいます。全世界、全宗教共通。
よし。言の葉庵も、今日公庫を開こうと思ってみたら、米びつは、からっぽ。隅っこのほうから”言葉”が二、三粒出てきましたので、これを、ふっと吹き払い、せめて出すことにしました。

慈悲というものは、言い換えれば運を育てる母のようなものだ。
(『葉隠』聞書第六 一八)

これは、個人のこととして読むと「見返り」となってしまいますが、ここでは、不特定の人が、不特定の人に対する行いのこと。すべての母親は子への愛情に対して見返りを求めません。いつくしまれ育った子は、大きくなる強くなる。


 直茂公は幼少の頃、梅林庵にて手習いをされた。当時、梅林庵近くに住む宝持院が、ご調髪、ご衣裳から諸事お手伝いにいたるまで、心を込めお仕え申し上げたものだ。直茂公は、成人後宝持院へ、
「いかなる望みも、叶えて差し上げましょう」
と申し入れられたところ、
「私には何の望みもありません。ですが、こんにゃくが好きなので、一生食べられたら、と思います。ねんごろに仰って下さることでもありますから、この望みをお叶えください」
と答えた。その日から、一生の間二日に一度、使いの者にこんにゃくを届けさせた、とのこと。
(『葉隠』聞書第三 一二)


 鍋島直茂は、佐賀鍋島藩を開いた、初代藩主(藩祖とされる)。宝持院については、詳細は不明ですが、おそらく乳母のひとりでしょう。幼少時、本家筋に預けられていた直茂。母代わりとなって、その身の回りの世話を、なにかとやいたものと思われます。立派に成人し、大藩のお殿様となった、もとの育て子に求めたのは「こんにゃく」。宝持院はもとより、育てた子に何の見返りも求めていない。また、今は側近くで、消息を伺うこともかなわない間柄。せめて、元気でいるとの便りを折々お聞かせください…。その願いが、二日に一度の「こんにゃくの使い」となるのです。

ぼくたちが子供の頃、クリスマスの夜はまくらもとに、いそいそと靴下をぶらさげたものです。翌朝、希望通りのプレゼントかそうでないかによって、喜んだり、がっかりしたり…。
子供時代は、もらったプレゼントしか目に入らなかったのですが、今は贈ってくれた人の心が、ただありがたく、その気持ちがもっともっと多くの人にも伝わるように、と願っています。

2006年12月24日 12:34

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