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無芸であること一芸となる 【言の葉庵】No.17

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┣┫OW┃O            無芸であること一芸となる 2007.3.4
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 かぁ。かぁ…かあっふんしょーーんっっ!!全国4781万人の花粉症仲間の皆
様いかがお過ごしですか。今週の名言名句は「無芸であること一芸となる」
「茶禅一味」です。芸の道は深い。イベント情報は、旬真っ盛り目白押しの春
の能、名舞台ご紹介。女流能に開眼です。4月から言の葉カルチャー講座装い
も新たにスタート。来てね。ひさびさの読者投稿コーナーは、鋭いご意見に気
弱な庵主たじたじ…。またお便りお待ちしています。


…<今週のCONTENTS>…………………………………………………………………

【1】名言・名句第十一回           無芸であること一芸となる
【2】言の葉講座                    4月期新講座開始
【3】イベント情報                 能ある鷹は能をみる
【4】読者コーナー                  数寄数寄一休さん

…編集後記…
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【1】名言・名句第十一回           無芸であること一芸となる
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 今号は『山上宗二記』から、二つの名言をご紹介しましょう。

No.21 茶禅一味。
No.22 無芸であること、一芸となる。

No.21 茶禅一味。

[本文抜粋]
 この一巻は、珠光が目利き稽古の道を、能阿弥に問い究め、その内容を日記
としてつづったものである。後継者、宗珠へ相伝した。(ある本によれば、末
子に相伝したとある)引拙の時代までは、珠光の風である。その後、紹鷗がこ
とごとく改め、加筆を終えた。紹鷗は当時の偉人であり、先達、中興である。
追加の一巻は辻玄哉まで相伝された。茶の湯の道具と秘伝が追々記されて
いる。
さて、この内茶の湯の行き方はすべて禅からきたものである。口伝・秘伝は口
頭にて伝えたい。書いたものはない。奥書に載せたものだけである。

 紹鷗が逝去して三十余年、今、茶の湯の先導者は宗易である。すなわち宗易
尊師に二十余年の間、聞き置いた秘伝の数々をこれへ書き改め、勘考している
ところ。名物一種一種についての目利きの習い、奥儀がここにある。とどまる
ところ、数寄者の覚悟とは、禅の心をもってなすべきである。

  紹鷗末期の言。

 料知す。茶味と禅味同じなること
 松風を吸い尽くして、こころいまだ汚れず

 唐物は代価の高下によらず、床に飾る道具をもって名物とよんだ。大壺と三
つ石は、昔より床に飾ってきた。その他、当代千万の道具はみな紹鷗の目利き
によって選び出されたものである。

『山上宗二記』珠光一紙目録より


[解説]
名言名句既出「一期一会」と同様、あるいはそれ以上に重要かもしれない、茶
の湯精神の根本を説く、成語・概念です。

 茶と禅、そのあらわれてくる形相や作用は異なりますが、実体は別物ではな
く、人間形成の道としてみれば、両者は不可分にして一体である、とする説。
概念としては、戦国期すでに芽生えていましたが、明確な思想と成語として書
物にあらわれた初出は『山上宗二記』。珠光一紙目録の項に、「紹鷗末期の言
」として出てきますが、実際は紹鷗参禅の師、大徳寺の大林宗套の言葉です。
紹鷗の肖像画の賛として、

料知茶味同禅味 汲尽松風意未塵

と書かれたのが「茶禅一味」のはじまり。宗二記では他の箇所にも、

「茶湯は禅宗より出たるに依て、僧の行を専にする也。珠光・紹鷗、皆禅宗
也」
「道陳・宗易は禅法を眼とす」

などと説かれています。宗二記に引き続き、その後主な茶書に「茶禅一味」は、
たびたびあらわれてきます。

「小座敷の茶の湯は、第一仏法を以って修行得道すること」
(南方録)
「茶道は本来禅によるがゆえに禅と同じく言語道断であり、さらに示すべき
道もない」
(茶話指月集)
「茶意は即ち禅意也。故に禅意をおきて外に茶意なく、禅味を知らざれば茶
味も知られず」(禅茶録)

 「茶禅一味」の「一味」は、もと仏教語です。今日の一般的な意味「仲間
・味方」とは別に、以下のような意味があります。

【一味】如来の教えが、説き方はさまざまであっても、その本旨はただひと
つであること
『新漢和辞典』大修館書店

 「一味」と関連し、禅・茶での重要な概念「三昧」も、同じく仏教用語。

【三昧】〔梵語〕samadhiの訳語。一つの事に心を集注して邪念のないこと。
ひいて一つの物事に熱中すること
『同上』

 禅の基本は禅定三昧の行であり、茶道の重んじるところもまた点茶三昧で
す。この「三昧」こそ茶禅一味の成り立つ共通の基盤であり、三昧の境地か
ら進んで、はじめて茶は禅に通じ、真の茶道となります。三昧より入る茶に
あらずば、点前がいかほど巧みであろうと、禅と「一味」の茶とはいえませ
ん。

 さて、このように禅(仏教)と縁の深い茶の湯。その礼法がキリスト教のミ
サと似ていることから、一時「利休=キリシタン説」が提唱され、物議をか
もしたこともありました。仏教と茶の関係を、キリスト教と葡萄酒の関係と
対比させる、鈴木大拙のユニークな説を紹介しましょう。

 茶が仏教を象徴するならば、葡萄酒はキリスト教を代表する、といえぬだ
ろうか。葡萄酒はひろくキリスト教徒に用いられる。教会ではキリストの血
を象徴するものとしているが、その血なるものはキリスト教学者にしたがえ
ば、罪業深き人類のために救世主によりて流されたものである。こういう理
由からか、中世の修道院では酒廠を持っていた。肥えふとった修道僧たちが
樽をかこみ酒盃をとって、陽気に楽しげに見える画はわれわれのときどき見
るところである。葡萄酒は初めはその飲手をうきうきさせ、やがては彼を酩
酊させる。多くの点で、茶といい対照をなすが、このコントラストはやがて
また仏教とキリスト教とのあいだのそれでもある。
『禅と日本文化』鈴木大拙

 少し話がそれましたが、「茶禅一味」「三昧」の境地がめざすものは、
「和敬清寂」の道ということがいえるのではないでしょうか。これは、まさ
に禅の世界観・人生観に深く根ざすもの。茶と禅の生活目標は別物にあらず、
ということ。
 「和」は聖徳太子の「和をもって尊しとす」。人と人との心の通い合い、
調和を意味します。「敬」は人を敬い、お互いの文化を尊重。「清」は穢れ
のない清らかな心。そして、その根底には「寂」、つまり静寂な悟りの境地
があり、すべてはここへとつながっていくのです。

 No.22 無芸であること、一芸となる。

[本文抜粋]
一 茶の湯者は、無芸であること一芸となる。紹鷗が弟子どもに、
「人間六十が寿命といえども、身の盛りはわずか二十年ほどのこと。絶えず
茶の湯に身を染めてはいても、なかなか上手になれはせぬ。いずれの道でも
同じである。まして他芸に心奪われては、皆々下手となってしまおう。ただ
し、書と文学のみ、心にかけよ」
 といわれた。

『山上宗二記』茶の湯者覚悟十体より


[解説]
 「茶の湯者覚悟十体」の最後の一条にあることばです。紹鷗が利休などの
弟子に伝えた教えのひとつ。紹鷗は”深切”の人で、弟子たちにことばや故
事を用い、よく指導した。かたや、利休はことばで直接教えることを嫌い、
弟子が自ら悟るようによく叱ったといいます(南方録)。
 この句も、上の「三昧」の境地をいったもの。ただし、ひとつだけ嗜んで
もよい例外の「他芸」があります。

「ただし、書と文学のみ、心にかけよ」

 書道と学問、すなわち手習いだけはせよ、といっている。ところで、世阿
弥もほとんど同じ事をいっています。ただし、やってよい多芸は、「和歌」。

「何よりもこの道を極めようとする者は他の芸能に心を移してはならない。
ただ歌道のみは例外である。この芸を飾る美となるもの。しっかりと身につ
けるべきである」
『風姿花伝』序

 「無芸」とは、人としてまったくうつろな無知・無学・無教養のことをい
うものではなく、禅定三昧の境地”空”をさすものと理解しましょう。茶の
湯や能を修行して、「道」にはいるために必要な素養の存在を紹鷗も世阿弥
も認めている。

『葉隠』では、「奉公三昧」を追究し、芸能はおろか学問までもあざ笑い、
切って捨てます。

「芸能が上手といわれている人は、頭が空っぽである。これは、ただひとつ
のことにのみ執着する、純粋で愚かな性質ゆえ、他のことは何も頭に入らず
芸が上達するのである。何の役にも立たぬもの。」
『葉隠』聞書一 一四七

「よろずの芸能も、武道奉公のためにと心に構えてすれば、役に立ってよい
ものだ。しかし大方は芸の方が好きになってしまう。学問などはとりわけ危
ない。」
聞書一 八〇

 『葉隠』特有の過激な言辞に度肝を抜かれますが、いっていることは同じ
「無芸こそ、一芸」。主語の「武道奉公」を、「茶の湯」または「能」と読
み替えれば、何も驚くものではありますまい。しかし、「学問などはとりわ
け危ない」には、妙に納得してしまう部分もありますが。

 さてこの「無芸」は、無論「無芸大食」などという時の、意志や目的のな
いものではありません。「一芸」を追い求める以外、他のものは一切目に入
らぬ、何も成せぬ、という境地。あらゆる分野の偉人は、例外なくこの三昧
の境地から生まれています。芭蕉もまた同様にいう、「ついに無能無芸にし
て、ただこのひと筋につながる」と。

「百骸九竅の中に物有。かりに名付て風羅坊といふ。誠にうすものゝかぜに
破れやすからん事をいふにやあらむ。かれ狂句を好こと久し。終に生涯のは
かりごとゝなす。ある時は倦て放擲せん事をおもひ、ある時はすゝむで人に
かたむ事をほこり、是非胸中にたゝかふて、これが為に身安からず。しばら
く身を立む事をねがへども、これが為にさへられ、暫ク学て愚を暁ン事をお
もへども、是が為に破られ、つゐに無能無芸にして、只此一筋に繋る。西行
の和歌における、宗祇の連歌における、雪舟の絵における、利休が茶におけ
る、其貫道(通カ)する物は一なり。しかも風雅におけるもの、造化にした
がひて四時を友とす。見る処花にあらずといふ事なし。おもふ処月にあらず
といふ事なし。像花にあらざる時は夷狄にひとし。心花にあらざる時は鳥獣
に類ス。夷狄を出、鳥獣を離れて、造化にしたがひ、造化にかへれとなり」
『笈之小文』風羅坊(松尾)芭蕉

屈指の名文です。ただの美文、修辞ではなく、飾らぬ真情を吐露しながらも
いささかも卑俗に堕することがない。「ある時は倦て放擲せん」「すゝむで
人にかたむ」「胸中にたゝかふて」「身を立む事をねがへども」…「つゐに
無能無芸にして、只此一筋に繋る」のです。他の一切を遮断して精進、潔斎
することではなく、人として煩悩・迷いにまみれ、回り道をしながらも、気
がつけば俳諧の「只此一筋」につながっていた。これを、「道」といいます。

→『山上宗二記』はこちら

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【2】言の葉講座                    4月期新講座開始
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4月から始まる2つの「言の葉庵」カルチャー新講座をご紹介します。1つめは、
名古屋栄の中日文化センターの『風姿花伝を読む』。近年能狂言が盛り上がり
を見せている中部地方へ庵主が出張します。風姿花伝をさらに深く掘り下げて
受講者の方と共に解読していきたいと思います。
 2つめは東急セミナー渋谷校での新規講座「はじめて見る能狂言」。ありが
ちな単なる能の歴史の座学ではなく、今までにない、現在進行形の生きた、使
える能狂言へのご案内としたいと思います。能役者の実態、現在の観客の価値
観、名曲の裏話、能スポット発掘など、言の葉庵ならではの講座とする予定で
す。
読者のみなさまには、この機会に上講座ぜひご参加くださいますよう、お願
いいたします。


1.栄中日文化センター
http://www.chunichi-culture.com/
講座名 「花と幽玄の秘伝書『風姿花伝』を読む」
曜日・時間 第1木曜日  昼 1:00~2:30
会場 栄中日文化センター  (名古屋市中区栄4-1-1 中日ビル4階)
講師 古典翻訳家 水野  聡

講座内容 千年にひとりといわれる天才能役者、世阿弥。600年間一子相伝のみ
にて封印されてきたその秘伝書を、当講座で読み解きます。日本人だけが「美
しい」と感じるものは何か。また、それはなぜか…。「花」と「幽玄」をキー
ワードに、磨き抜かれた達人の知恵と感性から、美の本質を学んでいきます。
4月から始まる6ヵ月講座です。

受講料 6ヵ月分 11,340円
備考 参考文献:PHPエディターズ・グループ『現代語訳 風姿花伝』
講座番号 1-10-018-0
問い合わせ・申し込み先:フリーダイヤル0120-53-8164 まで
朝10:00~夕方5:00まで受付しております。

2.カルチャースクール 東急セミナーBE 渋谷校
http://www.tokyu.co.jp/be/seminar/10704ACH01.html
講座名 「はじめて見る能狂言」

能狂言は、いくつかの簡単なルールを知るだけで、目からウロコが落ちるよ
うに、俄然面白くなる不思議な芸能です。ビデオ鑑賞・能舞台での体験学習
などから、基本と鑑賞ポイントを初心者の目線で、やさしく解説します。
古典翻訳家 能文社代表 水野 聡

途中受講可
曜日・時間 第1火曜
13:00~14:30
期間・回数・受講料 4/3~6か月全6回 18,000円
見学 不可
途中受講 可
カリキュラム 4/3  能の歴史と舞台の秘密 基本知識1
5/1 能役者と演技・能の物語  基本知識2
6/5 世阿弥と『風姿花伝』
7/3 能の実技鑑賞(ビデオ)
8/7 決定版 名曲・名役者紹介
9/4 課外授業 能楽堂特別見学会

*日時・講座内容は多少変更になることがあります
お問い合わせ 【東急セミナーBE 渋谷校】
TEL:03-3477-6277
受付時間:
 平日・土曜 10:00~20:00
 日曜 10:00~16:00
 (※語学講座は日曜は受付いたしません)
 祝日、年末年始休業


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【3】イベント情報                 能ある鷹は能をみる
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タイトルにはあまり意味がありません…。すみません。春たけなわ、能狂言公
演も一年のピークを迎えています。3~4月の今、絶対に見ておきたい能組を、
独自のセレクトでお届けします。


1.セルリアンタワー能楽堂 定期能5月公演−観世流−
http://www.ceruleantower.com/nohtheater_kikaku_schedule.html
2007年5月4日金曜日(祝日)

セルリアンタワー能楽堂、5月定期能組は「藤戸」「融」の名曲2番をシテ方観
世流を代表する二人の役者により、めったに見られない小書つきでそれぞれお
贈りします。関根祥六師は現在観世流シテ方の最長老株。面のつきが美しく、
常に気品あふれる真摯な芸を見せてくれます。山階彌右衛門師は、前名観世芳
宏師が能の旧名家「山階」を襲名したもの。弟の芳伸師と二人で、いにしえの
”風流大臣”の優雅な舞を披露してくれるはず。
 当能楽堂は舞台と座席がとても近く、能役者ひとりひとりの息遣いまで間近
で感じることができます。じっくりと名曲を鑑賞する人のため、とても行き届
いた環境です。

【第一部】
開演時間午後1時00分
能「藤戸」蹉■之伝(■は足へんに它)
シテ 関根祥六 
ワキ 村瀬純  アイ 三宅近成
後見 観世芳伸、寺井栄
地頭 武田志房
笛 一噌仙幸  小鼓 観世新九郎
大鼓 亀井実  
狂言「文相撲」(和泉流)
三宅右矩 三宅右近 高澤祐介

【第二部】
開演時間 午後4時30分(会場午後4時00分)
能 「融」 舞返之伝 シテ 山階彌右衛門  ツレ 観世芳伸
ワキ 村瀬純
後見 上田公威、寺井栄
地頭 武田志房
笛 一噌仙幸  小鼓 観世新九郎
大鼓 亀井実  太鼓 助川治
狂言「簸屑」(和泉流)
三宅右矩 三宅近成 高澤祐介

料金:一部二部それぞれ(税込)
正面席(S) 12,000円
脇正面席(A) 10,000円
中正面席(B) 8,000円
チケット取扱 Bunkamura チケットセンター(03−3477−9999)
チケットぴあ(0570−02−9988)


2.緑泉会 津村紀三子三十三回忌追善別会
http://www.ntj.jac.go.jp/nou/index.html

津村紀三子は、史上初で能舞台にプロとして立った、女性能楽師。当初能役者
をこころざすも、女性のためか誰も教えてくれず、自ら毎日見所に通い、実際
の舞台を見て謡と型を書き取り、芸を”盗み”、独力独学で道を切り拓いたと
いわれています。故人をしのび、九皐会当主以下矢来グループ総力で名作能を
手向けます。「正尊」には、立衆として、”言の葉庵矢来能楽堂見学会”で実
技と案内を受け持ってくださった、観世九皐会の奥川恒治師、古川充師、桑田
貴志師のお三方も出演されます。ぜひ観劇&応援にお出かけください。正尊の
斬り組みはかなり危険な技が頻出しますのでみなさまのご無事もお祈りしつつ…。

4月21日(土) 13:00開演 国立能楽堂

能 「清経」 恋之音取 シテ 中所宣夫
狂言 「魚説法」 野村萬歳
舞囃子 「杜若」 足立禮子
能 「正尊」 起請文・翔入 シテ 津村禮次郎

入場料:S席 12000円 A席 10000円 B席 7000円 自由席 5000円
申し込み:緑泉会 TEL 042-386-2131 FAX 042-386-2132

3.女性能楽師による能
国立能楽堂開場40周年記念 企画公演「班女」「小鍛冶」
http://www.ntj.jac.go.jp/nou/index.html

 女流能を受け入れないのは、実は自身もお稽古しているコアな女性能ファン
が多いのではないでしょうか。確かに能は数百年もの間、男性だけで演じ、継
承されてきた芸能。受け入れない理由として「女が女に化けるなんて」「力が
弱い」などという声を聞いたこともあります。(白洲正子の影響もあるのかも…
)しかし、能をみて一番感動するのは、全身全霊を込め「この舞台で生涯のベス
トを出す。たとえ死んでもかまわない」ほど、精魂込めた舞台の芸です。これ
は男女、玄人素人関係なし。上の津村さんの例を見るまでもなく、女性能楽師
にはそもそもハンディが多く、今第一線で舞台をつとめる方々は男性能楽師の
100倍努力しているのです。下の鵜澤久師など、なみの男性能楽師では足元にお
よばないほどのしっかりした芸をもっている人。今回国立能楽堂がはじめた有意
義な新企画。女流食わず嫌いの人、ぜひご自身本当に「女流がため」なのか確か
めにいかれてはいかがでしょうか。

3月24日(土)
開演時間 13:00
能「班女」富山禮子(金春流)
能「小鍛冶」黒頭 鵜澤久(観世流)
席種・料金  正面:\4,800
 脇正面:\3,100
 中正面:\2,600
*字幕表示あり(日本語と英語の2チャンネルでご利用いただけます)
お問い合わせ先 国立劇場チケットセンター(10:00~17:00)
0570-07-9900
03-3230-3000(PHS)

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【4】読者コーナー                  数寄数寄一休さん
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 ひさしぶりの「読者コーナー」です。前回メルマガ「死にとむない…一休の
風狂とは」にたくさんのお便りをいただきました。みなさま本当にありがとう
ございます。お叱り、励まし、共鳴、次回作アイデア…と、おひとりおひとり
の智恵と勇気を頂戴しました。庵主ひとりで、こっそり楽しむのももったいな
いような貴重なご意見ですので、差し支えのない範囲で一部抜粋ご紹介させて
いただきたいと思います。

 早速ながら、御元気そうで、何よりです。また、ご活躍の場が(関西方面に
まで)
増えているご様子、凄いです。お喜び申し上げます。
 「言の葉庵」にはいつも為になることが多く記載されているのですが、老眼
でもあ
り、なかなか読むのにも理解するのにも苦労するのですが、今回は、最後の方
の、
「日本が”壊れていく”姿を目の当たりにし、ただ「昔はよかった」というだ
けでは
なく、今すぐ実践すべき・・・」という一文に、前後の脈絡はともかく、大変
共感致
しました。
 我が身を振り返り、厳しい鞭を一振りされたようにも感じました。

 何はともあれ、知的かつ理性的な方にはできるだけ長生きをして戴き、長老
・老師
となり、無知蒙昧な人民を、より良き方向へ導いていって戴きたいものです。
Mさん


一休の狂雲集の訳を付けた本を出されたらと思います。
風狂・奇行をクローズアップすることを離れ、日本独自文化萌芽の十字路
で指針を示し、多くの芸能・藝術家たちの精神的支柱として存在した彼を
今の時代こそ再評価し世に出して欲しいと思います。
Nさん


 久しぶりのようなメルマガ・・・・。

今回のメルマガもミズノイズムが横溢していました。
■ 「一休」 相変わらずいいテーマです。丁度1月に「酬恩庵」
  のHPをクリックして調べていました。近鉄の新田辺(だったか?)
  を通過する度に、一休に想いを馳せていました。むかし、N
氏から『狂雲集』を借りて読んだこともあります。
  
■ 貴兄の表現を借りれば、「孤絶」でなければ、「風狂」はない。
  水上一休論はワタシも読みましたが、引用が多くて、持論展開
  の活字数はごく僅か、に失望しました。吉本隆明や小林秀雄の
  「西行論」とは一線を画すべきか。当時の水上氏が大家であり、
  一休を採り上げる作家も前にいなかった、ということで講談社(
  だったと思ったが)も単行本にしたものか、と自分なりに納得して
  いた。同じ寺の経験が動機として、ペンを走らせた?注目すべきは
  寺内での男色の問題を提起したこと。

■ 一休を考える場合、義満との出会いと森女との同棲期間が
  ポイントだと睨んでいた。心的状況、推移を現代人の眼からどう
  推測していくか、人間一休を掘り下げなければ意味はないので
  はないか、と・・・。
  『死にとむない(死にたくない)』はワタシにとっては新しい発見。
  人間一休を小説化しようとすれば、タイトルは迷わず、これに
  するだろう。
  
■ 一休の同時代人は誰々か、を年表的に一覧表にして欲しかった。
  その距離感や関係性に縦糸と横糸で時系列的に綾なすとき、また
  違った推測が成り立つのでは、と。
  ワタシは途中までやって、完成せず、そのままホッタラカシ。
  いまは、藤原定家、新古今集と小倉百人一首の謎に迫りたいなぁ
  といった気分。相変わらず、自己完結しないワタシです・・・・。


■<肩引き>、<こぶし一つ腰浮かし>などの「江戸しぐさ」。
 昨年から出版社勤務の先輩とこのキーワード
 について、現在の状況ではもっと表に顕われて然るべき、と
 議論していたところ。
 そしたら、この手の専門研究家である越川禮子さんがカオを
 だしてくるわ、公共広告機構のCMで動画として素材化される
 わで、お互いイイ勘しているな、と言っていたいたところ。
 そしたら、貴兄もちゃんと採り上げている、イイ感覚してますよ。
Mさん


【言の葉庵】も読ませていただいております。
先月、母親を弔い、少しずつ気持ちの整理をつけていますが、
肉親の死というものはやはり凡人には壁のようなものですね。
死と宗教をすぐ結びつけるものではありませんが、
僧侶になりたいと願う要素の中に身近な死の体験を聞いたことがありまし
たが、
その気持ちが何とかなくわかるような気がします。
Fさん


お久しぶりです。
メルマガ興味深く読ませていただきました。結構あちこち転送もしちゃいま
した。風の意味 まったく目から鱗です。一休さんはとても自然体の方だっ
たんですね。昔の日本人は 怪傑が多いですよね。利休も然り。 いまのど
こかの大臣みたいに発言一つでネチネチ突っ込まれて 謝るしか能がない人
に比べたら 何たる強さでしょう。女は命を産み落として初めて価値がある
と思うけれど 産める特質があるのに生まないことを選ぶ女より 産む機械
でも 命を繋げることが出来る女の方が価値があると思うんだけれど。命を
つなげていく行為は女にしか出来ないのに 放棄する女が増えているのかち
ょっと残念です。
Kさん


……………《編集後記》………………………………………………………………

いじめについて一言。今朝NHKのTV討論で「いじめ」特集の番組をみました。
元いじめっ子、いじめられっ子の子供グループと先生、教育関係者など大人グ
ループで討論。番組終盤で、大きくスタジオが反応したのは、「どうして大人
ばかり発言して、子供の意見を聞かないのですか」と「先生と親が仲良くして
くれたら、いじめはなくなる」。この二つの子供グループからの発言でした。
「先生と親が仲良く」には、1時間半の番組ではじめて子供グループから歓声
と拍手がわいた。いじめの原因は、「相手の立場に立たず、相手の気持ちを理
解しない」にあります。現代日本は「人を人と思わない」恐ろしい世の中にな
りつつある。法に触れなければ何をやってもかまわない、さらにそうして自己
の利益のみ追求しないやつはバカだ。落ちこぼれる。「弱いものをいじめては
いけない」「他人を思いやる」は、利益追求のためにまず、排除されています。
大人たちの論理を子供たちも無意識に取り入れ基準とする。
いじめは子供時代の心の病。その原因の大部分は家庭と親にあります。成熟し
た文化をもたず、弱い子供時代の心そのままの親と家族の結びつきのない家庭。
結局現代のいじめ問題は、教育に原因はなく、日本古来の文化がなくなってし
まったことに起因していると思われます。生命観、生命倫理は、科学や哲学、
道徳などにはなく宗教のみにある。キリスト教圏から見て、”日本人は無宗教”
などといわれますが、とんでもない。神道、仏教、禅…。日本は世界に名ただ
たる歴史的宗教大国です。ただ、日本は歴史的に宗教が「生」のままで民衆に
普及、定着することがなく、さまざまな分野の学・芸・道の中に巧みにもぐり
こんで「日本文化」に形を変え伝播してきました。
茶道、武士道など、とりわけ「精神文化」に形を変えた日本型宗教。これらを
子供にもわかりやすく伝えることができないか、と考えています。たとえば、
小・中学生向けに『葉隠』や『南方録』のエッセンスを編集し提供するなど。
理想は親子で学べる形態のもの。人ひとりの命が「日本と中国を足したもの」
よりもなお重い(『葉隠』)ということをまずわかってほしいと願っています。
(言)

……………………………………………………………………………………………


……………………………………………………………………………………………
  
【言の葉庵】へのご意見、ご感想、お便り、ご質問など、ご自由に!
 皆さんの声をお待ちしています。Good!の投稿は次号にてご紹介いたします。
 http://nobunsha.jp/nobunsha.html
 
……………………………………………………………………………………………

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2007年03月12日 10:51

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