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構えを取るということは敵がいない時のこと 【言の葉庵】No.2

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 ┣┫OW┃O 正しくても負けるのはなぜ? 剣豪に学ぶ勝利の極意 2006.1.11
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 第二回目名言・名句は剣豪 宮本武蔵の「世の中で構えを取るということは敵
 がいない時のこと…」「速いと感じるのは物事が正しい拍子に合っていない
 …」です。達人の卓見により、「絶対に正しい」と考えられている常識を根底
 からくつがえした名言です。新コーナー”日本語ジャングル”では、これも
 規定概念を真っ向から問い直す、目からウロコの万葉集新解釈「もうひとつの
 万葉集」をご紹介。ともに物事の本質をずばり見抜く眼力を学びたいですね。
  
  
 …<今週のCONTENTS>…………………………………………………………………
 
 【1】日本語ジャングル      第一回 万葉集は韓国語で詠まれていた
 【2】今週の名言・名句第二回        <構えは敵がいない時のこと>
 【3】凄すぎサイト          日本文化 伝統芸能のホームページ
 【4】問わず語り~編集雑話            思い出の賞味期限は? 
 
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 【1】日本語ジャングル      第一回 万葉集は韓国語で詠まれていた
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 古今東西、カテゴリー、ジャンル一切問わず、言の葉庵が発見した日本語の
 謎、秘密をレポートし、前人未到の日本語ジャングルへと誘います。
 第一回目は、日本の言の葉の聖典、”万葉集”の謎を解き明かす、こんな本を
 ご紹介。
 
 
 万葉集には「難訓歌」とよばれる歌がある。ようするに、読みが難しい。解
 釈が難しい。つまり、学者にもなんのことか、さっぱりわからない、という歌
 が非常に多いのです。それは、万葉の歌の大半が韓国語、それも古代韓国語で
 詠まれていたからといいます。さて、このとんでもない歴史的・文学的スキャ
 ンダルをすっぱ抜いたミラクル ブックを紹介しましょう。それは…
 
 「もうひとつの万葉集 李寧熙(いよんひ)」文春文庫1991
 
 本作骨子を、カバー裏解説から引用します。
 
 ―万葉集が編まれてからおよそ千二百年。今、韓国語によってまったく異相の
 万葉集が浮かび上がる。これまでに誰にも読み解くことのできなかった謎の難
 訓歌も、韓国語でみごとに完全解読。雄略天皇、額田王、柿本人麻呂、山上憶
 良などの歌に秘められた真の意味とは何か?今こそ文学史が書き改められる―
 
 【原文】雄略天皇の詠んだ代表的な難訓歌である(巻一の一)
 籠もよ み籠持ち ふくしもよ みぶくし持ち
 この岡に 菜摘ます児 家聞かな 名告らさね
 そらみつ 大和の国は おしなべて 我こそ居れ
 しきなべて 我こそいませ 
 我こそば 告らめ 家をも名をも
 
 【従来の解釈】
 籠も 良い籠を持ち ふくしも 良いふくしを持ち
 この岡で 菜をお摘みの娘さんよ 家を聞きたい 名のっておくれ
 〈そらみつ〉この大和は ことごとく わたしがすべている国だ
 すみずみまで わたしがおさめている国だ
 
 【真の意味】古代韓国語による読解
 狛よ 瑞穂の狛たちよ 復旧よ 瑞穂の復旧の者たちよ
 この丘に 私は(先代と)並び立ち
 ここに家を作り 告げて住もうと思う
 さろみつ やまとの国は 押さえおきて 統治者は私一人である
 鎮めねかして 私は自ら位に就く
 私は急ぎ来て 告げる ここに来る 出てくると
 
 狛は狛族、すなわち韓国人の総称。復旧(ふく)は、占領し服属させた領土の
 ことです。
 「菜摘ます児」の韓国語の読みは「なたらそご」。我は並び立つ(先代王と)と
 いう意味になります。この歌の前半は、岡で菜摘む娘への牧歌的な問いかけな
 どではなく、眼前にひれ伏す非占領民に対する、高らかで威圧的な新天皇即位
 宣言だったのです。
  もちろん万葉集すべてが、韓国語で詠まれたわけではなく、日本語ですんな
 り解釈できる歌もある。しかし、時代が古くなるほどに、難訓歌の割合も増え、
 そのほとんどが調べると古代韓国語で詠まれている、と著者は指摘しています。 
 
 
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 【2】今週の名言・名句第二回        <構えは敵がいない時のこと>
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 その3 世の中で構えを取るということは敵がいない時のことである。
 その4 速いと感じるのは物事が正しい拍子に合っていないので、ずれた分だ
 け速いとか遅いとか思うのである。
  ~宮本武蔵「五輪書」風の巻より
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  五輪書は剣聖、宮本武蔵の代表的な著作です。地・水・火・風・空の全五巻
 より成る、兵法の秘伝書。なかでも第四巻、風の巻では他流の剣術を客観的に
 論証、評価し、剣技や勝敗の本質を鮮やかに解明しています。ここでは、この
 風の巻より「構え」「速さ」という概念をあくまで数々の実戦を潜り抜けてき
 た達人だけが表現できる至言として取り上げました。
 その3「構えを取るということは敵がいない時」は、刀の構えに重きを置く
 他流派の教義を論破する段落です。武蔵はまず構えとは、用心のためであると
 定義。構えのために型や規則をつくることは、そもそも兵法勝負の世界にはな
 いと断言します。何よりも構えることで、相手の攻撃、先手を待つ心が生まれ、
 先手必勝を第一義とする兵法の道に逸れること。また、有構無構の境地で防御
 の柵をも引き抜き、振り回して敵を打つほどの気構えをもつことが大事だと説
 きます。
  その4「速いと感じるのは物事が正しい拍子に合っていない」は、兵法にお
 いてむやみに速さのみ求めることを否定しています。一日に四、五十里も行く
 飛脚の走り方、謡や囃子の上手の拍子と間の取り方を例にとり、拙速の矛盾と
 無理を解き明かします。兵法においては、ぬかるみなどでの身体や足の使い方、
 太刀をふる勢いなどでの、速さの欠点を指摘。論点はむしろ速さというよりは、
 正しい拍子に合わぬこと、間がとれぬことによるずれや狂いの指摘にあるとも
 思われますが、いたずらに速さ、スピードを尊重する当時の剣術、兵法への警
 鐘が中心テーマなのでしょう。速読法やスピード経営が、無批判にもてはやさ
 れている現代においても有効で普遍的な問題提起であるといえます。
 
 [本文抜粋]
 一 他流で太刀の構えにこだわること
  太刀の構えを専門で伝授するのも間違いである。世の中で構えを取るという
 ことは敵がいない時のことである。詳しく言えば、昔からの慣例でとか、今の
 法律でとか、法や規則を立てることは勝負の世界にはないのだ。相手相手に合
 わせて不利なように仕掛けることである。一般的に構えとは揺るがないための
 用心である。城を構えるとか陣を構えるとか言ったりするのは敵に攻撃されて
 もびくともしない構えを通常は指す。兵法勝負の世界では何事においても先手
 先手と攻めることを心がけるものだ。構えるとは、先手を待つ心持になってし
 まう。よく検討すべきだ。兵法勝負の世界では相手の構えを崩し、敵が思いも
 よらない攻撃を仕掛け、あるいは敵をうろたえさせ、あるいはむかむかさせ、
 または脅かして敵が混乱したタイミングで勝機を捉え勝つことであるから、構
 えという後手の方法を否定するのだ。すなわち当兵道に有構・無構として、構
 えはあって構えは無しという指針がある。集団の兵法でも敵の軍団の規模を把
 握し、その戦場の地形を知り、自軍の士気を確認し、戦略を立て兵員を配備し、
 戦端を開くことが合戦では重要なことである。人に先手を取られたときと自分
 から取るときでは、その有利・不利の効果は倍も違ってくるのだ。太刀を完璧
 に構え、敵の打ち込みをよく受け、よく張ったとしても、それは防御の柵越し
 に、鑓・長刀で遠くから振っているようなものに過ぎない。敵を打ち込もうと
 思うのなら、柵木を引っこ抜いて鑓・長刀の代わりに振り回すぐらいの気持ち
 が必要だ。よく検討して見なさい。
 
 一 他の兵法で速さをよしとする
  兵法ではただ速いということは本道ではない。速いと感じるのは物事が正し
 い拍子に合っていないので、ずれた分だけ速いとか遅いとか思うのである。そ
 の道の達人になれば速くは見えないものだ。飛脚を例にとれば、一日に四、五
 十里もいくものがある。これも朝から晩まで速く走っているわけではない。未
 熟な飛脚は一日中走っても、さして距離は伸びないものだ。また能の世界で、
 上手が謡う謡に、下手が一緒に謡えばとかく遅れてしまうので、忙しく聞こえ
 るのだ。また鼓・太鼓で老松を打つ場合、静かな曲だが下手はここでも遅れた
 り、先走ったりしてしまう。高砂は調子が急だが、速いということは悪い。速
 いとは、コケるといって拍子の間に合わない。むろん遅いのはもっとよくない。
 これも上手の場合、ゆるゆると見えて決して拍子の間が抜けない。万事達人の
 することは忙しく見えないものだ。このたとえで、速い遅いの道理がわかるだ
 ろう。とりわけ兵法の道では、速いということはよくない。そのわけは、これ
 も場所により沼やぬかるみでは身体も足も速く動かせない。太刀もなおさら速
 く斬ることはない。速く斬ろうとすれば扇や小刀でもないので、ちょんとやり、
 まったく斬れないものだ。よく考えてみなさい。集団の兵法でも、速く急ぐ心
 が妨げとなる。枕を押さえるという口伝を心得ていれば、何も遅いということ
 は関係ないのだ。また相手のむやみに速いことには、そむくといって静かな気
 持ちになり、人に引きずられないようにすることが大事だ。この心持を工夫し
 日頃鍛錬することだ。
 
 
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 【3】凄すぎサイト          日本文化 伝統芸能のホームページ
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  言の葉庵パートナー サイトをはじめ、趣味、仕事、お散歩(?)にとても役
 立つ、”凄すぎる”サイトをまとめてご紹介していきます。
  今週は、言の葉編集部が日頃ご厄介になっている、日本の文化や伝統芸能の
 名物サイトをご紹介します。各サイト管理者のみなさまは、日本の文化や伝統
 を心から愛し、すべてをなげうってこれらの継承と普及に長年尽力されている”
 凄すぎる”方々です。ぜひ、サイトに遊びに行ってみてくださいね。
 
 
 能 狂言のホームページ
 http://www.iijnet.or.jp/NOH-KYOGEN/
 
  全国演能情報など、能狂言のぎゅっと濃縮された情報をタイムリーに発信し
 ていく、業界草分け的な能楽専門サイト。新作能、狂言のプロデュース、観客
 が選ぶ「リクエスト狂言」主催、能狂言ファンのコミュニティ”ネットワーカ
 ークラブ”運営、能楽総合フリーペーパー”KENSYO”発行等。
 株式会社セクターエイティエイト
 
 
 アーカイブス・ジャパン オフィシャルサイト
 http://www.archives-japan.org/
 
  能狂言、文楽、歌舞伎、落語など、日本の伝統芸能を全く新しい視点とアプ
 ローチにより、プロデュースしていく。伝統と現代をテクノロジーで融合する
 デジタル アーカイブ手法により、日本の伝統文化と遺産を次代に力強く継承。
 ビジネスと日本文化をブリッジする異業種交流会も主催。
 株式会社アーカイブス・ジャパン
 
 
 間申楽 能楽の杜
 http://www.webslab.com/
 
  現行謡曲(金春流)170番の原文・解説・現代語訳を網羅した謡曲データベース
 を設置。「能楽悩み相談室BBS」など、能狂言ファンの幅広い交流の場として長
 年実績を積み上げる。能狂言関係では、随一の発行数を誇るメールマガジン
 「演能情報」を、全国各地定期的に5誌発信中。能や伝統文化をシェアするオフ
 ライン勉強も開催。
 有限会社 WEBS研究所
 
 
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 【4】問わず語り~編集雑話            思い出の賞味期限は?
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  昨夜HP更新用の画像ネタ探しのため、プライベートな写真ストックをひっ
 くりかえしていました。家族といっしょに撮ったもので、デジカメ画像が5~
 6年前まで、それ以前はアナログ写真のカミヤキです。見ていてやはり面白い
 のは自分の写真で、デジタルのものの変化は、せいぜい髪型やヒゲがあったり、
 なかったり程度なんですが、古いアナログプリントは正直かなり笑えますね。
 …若すぎ! …ファッションが変!! しかし、経年変化によりプリントが退色
 しかかっているので、適度に時代を感じさせ、「ああ、こんな頃もあったなあ」
 と妙に納得できるものがあります。
 さて、ここで予想もつかない問題が。デジタルデータは永遠に色あせない。
 今の画像がアーカイブされて、30年後40年後に、子や孫たちといっしょに見
 たとしましょう。子よりは明らかに年下、下手したら孫と同級くらいのお爺ち
 ゃん(自分)がお婆ちゃんと気取って、今はすっかり旧跡となった六本木ヒルズ
 で妙なカタチの上着を着てすまして映っている。モニター画像は、昨日撮影し
 たように非常に生々しく、鮮明…。昭和頃の家族アルバムや、戦後の記録映像
 なんかも撮影と保存技術の問題があるにしろ、セピア色になり、画像がざらざ
 らしているからこそ、時代を感じるものですね。年を取れば取るほど、自分の
 過去がかけがえのない宝物になっていくとは思えますが、なんでもかんでもす
 べてそのまんま残っていくことには、漠然とした不安を感じてしまいます。思
 い出には、賞味期限があった方がいい。あれも、これもいつかは役に立つ…と
 思って資産のごとく徹底的に捨てない、保存する…。実は、これは老化のしる
 し。ついつい大量のアナログプリントをデータスキャン、保存してしまい、気
 がつくと午前3時になっていたぼくが、その時はっと気がついたことでした。
  
 
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2006年01月11日 20:52

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