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現代語訳『教育勅語』

明治天皇が掲げる国民道徳の根本理念として、1890年に発布され、戦後1948年に廃止された『教育勅語』。正しくは『教育ニ関スル勅語』といいます。

その趣旨は、現在以下2点に集約することができます。

1. 家族国家観による忠君愛国主義と儒教的道徳であり、教育の根本は皇祖皇宗の遺訓である。
2. 忠君愛国を国民道徳として強調しており、学校教育で国民に強制され、天皇制の精神的・道徳的支柱となるもの。

1947年、日本国憲法が施行されると、その最高法規制の下、法的根拠失効が確認され、閣議決定により1948年に廃止されました。
この時政府により討議、確認された教育勅語と日本国憲法の基本理念の違いは以下のように明瞭でした。

■教育勅語 「神話的国体観」「主権在君」
■日本国憲法 「民主的平和国家」「主権在民」

原文は明治時代の漢文読み下し調、すなわち文語体で書かれており、一般には読解が難しいため、多くの口語訳が試みられてきました。しかしそれは当然、様々な解釈の違いを生み出す原因となりました。
1940年文部省による公式現代語訳をはじめ、国民道徳協会版(明治神宮掲出)など、公私織り交ぜ、様々な立場と解釈をもとにした訳文が現在見られます。

【言の葉庵】では、直訳を基本とし、極力意訳と思想的色付けを廃し、すべての人にわかりやすく、読みやすい平成版『教育勅語 現代語訳』を作成しました。
近代史に触れるために、ご参照いただければさいわいです。

〈現代語訳〉

私は考えます。
天皇である私の祖先がはるか昔に国を初めて作り、多くの徳を積み重ねてきた、と。
そして私の臣民は忠と孝を尽くし、すべての国民が心を一つにして代々立派な行いをなしてきましたが、これは日本が咲かせた美しい花というべきもので、教育の根源も実はそこにあるのです。

あなたたち国民は、父母に孝行を尽くし、兄弟仲良くし、夫婦は仲睦まじく、友とは信じあい、人を敬い自分の行いは慎んで、博愛の心を広めていき、学問を修め、手に職をつけていきなさい。
そして知恵と能力を高め、徳を身につけ、公益を推し進め、仕事を発展させ、つねに憲法を重んじて国法を守るべきです。
非常時には、義に従い、勇気を起こして公に奉仕し、窮りのない皇室の運命を助けなさい。

こうしたことは、ただ天皇の忠良な臣民だから、というだけではなく、さらに自分たちの祖先が伝え、遺してきたものを認め、尊ぶことにもつながっていくのです。

この道は、まことに天皇家の遺訓であり、私の子孫と臣民がともに守るべきものです。
これは、過去、現在、未来と一貫して誤りなき道であり、国の内外を問わず実行しても過ちはありません。

私は、あなたたち国民とともに、これを胸の奥深く大切に守り、全国民共通の道徳としていくことを心より願っています。

(2017年4月4日 水野聡 訳)

〈原文〉

朕󠄁惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇󠄁ムルコト宏遠󠄁ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世世厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦󠄁相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博󠄁愛衆ニ及󠄁ホシ學ヲ修メ業ヲ習󠄁ヒ以テ智能ヲ啓󠄁發シ德器ヲ成就シ進󠄁テ公󠄁益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵󠄁ヒ一旦緩󠄁急󠄁アレハ義勇󠄁公󠄁ニ奉シ以テ天壤無窮󠄁ノ皇運󠄁ヲ扶翼󠄂スヘシ是ノ如キハ獨リ朕󠄁カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺󠄁風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道󠄁ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺󠄁訓ニシテ子孫臣民ノ俱ニ遵󠄁守スヘキ所󠄁之ヲ古今ニ通󠄁シテ謬ラス之ヲ中外ニ施シテ悖ラス朕󠄁爾臣民ト俱ニ拳󠄁々服󠄁膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶󠄂幾󠄁フ

明治二十三年十月三十日
御名御璽

2017年04月04日 14:35

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