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勝つためのノウハウ『五輪書』前半

 北京オリンピック開催中の特別限定企画。必ず敵に勝つため、ここ一番の大勝負を制するためのノウハウを、剣聖宮本武蔵『五輪書』に学ぼうとするものです。前半と後半の二回に分けてお届けします。

■オリンピックで絶対に金を獲得できる方法

生涯60度にわたって各流強豪と真剣勝負をし、その一度も負けなかった伝説の不敗の男…。

剣豪、宮本武蔵の代表著書に『五輪書』があります。タイトルだけの連想でなぜ、オリンピックの年にだけ売れ行きが伸びるのか?それはこの本が、たとえではなく確実に勝負を制する「100%必勝法」がぎっしり詰まったものだから。
たとえば「光を必ず背にして戦う」などの初歩的兵法から、「影を動かす」「敵(の身)になる」などの高度な心理テクニックにいたるまで、まさに「勝つための史上最強」の実践ノウハウ集だからです。

この本にかかれた方法を実践して、戦いに敗れることは絶対にありません。
しかし…「じゃあ、五輪書を読めば誰でもオリンピックで金メダルが取れるのか?」
という質問には、「読むだけでは取れません。しかし、すべてを実行することができれば負けるはずはありません」と答えるしかないのですが。
名著です。夏休みにぜひご一読を。


■リアルに勝つ!ノウハウ塾 第一回

「必ず勝つ方法」を、不朽の兵法書、宮本武蔵『五輪書』からお届けします。

用途は、ビジネス・恋愛・受験・人間関係…、すなわちすべてのシーンで、確実に勝ちたい人の有効な方法です。


第一回目は、必勝の九か条。五輪書、冒頭「地の巻」に敷衍された、武蔵の金科玉条です。

「ことここに至ればどのようにしても他人に負けるようなことがあろうか。また、兵法の大きな視点に立てば、すぐれた人材を得ることに勝ち、集団を管理することに勝ち、正しい道を行くことに勝ち、国を治めることに勝ち、民を養うことに勝ち、法律を守ることに勝つ。いずれの道においても人に負けないこととなり、わが身を助け、名を上げること。これが、真実の兵法の道である」と武蔵自身、ここで結論付けています。
それではご紹介しましょう。一語一語ことのほか深い。理想ではなく、実践的である。よく真意をかみわけてください。

第一に、邪に陥らないと信じるところ
第二に、道の鍛錬をするところ
第三に、広く諸芸に触れるところ
第四に、諸学問に通じること
第五に、物事の利害得失を認識すること
第六に、物、人を見る目、鑑識眼を養うこと
第七に、目に見えない部分を悟って知ること
第八に、些細なことにも注意を払うこと
第九に、役に立たないことはやらないこと


■ノウハウ塾 第二回「自社の商品と人材を知る」

第二回目は、自社製品とツール、人材、組織などの強み、弱みをよく知り、使いこなし、「勝つ」ことを学びます。

『五輪書』は兵法の書なので、当然剣術や戦闘が主語となっていますが、あなたが経営者や会社員なら、主語を「ビジネス」と、あなたが学者や学生なら「学問・勉強」とそれぞれ読み変えて、その真意を汲み取ってください。
さしあたってここでいう「武器」は、「商品」「サービス」「営業ツール」などと翻訳すれば、腑に落ちようかと思います。


第一巻「地の巻」
兵法において、諸武器の利点を知る

 武器の利点を考えてみると、どんな道具であっても折にふれ、時に従って効用があるものだ。
 脇差は狭い場所、敵との接近戦で効果を発揮する。太刀はどんな場所でもそれなりに使えて便利だ。長刀は戦場では、いくぶん鑓に劣るかもしれない。鑓は攻撃の道具であり、長刀は防御の道具だからだ。同程度の修行、腕前であれば鑓の方がやや有利である。鑓も長刀も場合によるのであり、接近戦では役に立たないし、籠城戦などでもしかるべしだ。戦場専用の道具といえよう。
 特に合戦のシーンでは重要な武器だ。なのに、室内や道場での使い方を習い、細かな技巧にとらわれて本来の道を忘れてしまっては物の役には立たないだろう。
 弓は合戦の場において、かけひきに役立ち、鑓隊やその他諸部隊との連携によりすばやく攻撃できるので平地での野戦には特に向いている。ただ城攻めまたは敵との距離が50メートルをこえる場合は役に立たない。
 最近の傾向として弓は言うに及ばず、諸武芸において、花ばかり多くて実が少ないようだ。このような武技は肝心の時役に立たないものだ。メリットも少ない。
 城の中からの攻撃として、鉄砲に勝るものはない。野戦においても本格的な戦端が開かれないうちには、利点が多い。いざ戦闘が始まってしまっては出番がないのだが。弓のひとつのメリットは、飛んでいる矢が、人の目に見えるということだ。鉄砲の弾は、見えないということでよくない。このニュアンスをよく考えて見なさい。
 馬について言えば、力が強く耐久性があり、くせがないことが肝心だ。そうじて馬も武具といえるので、相応に行軍に耐える脚力が必要だ。刀、脇差も相応に切れて、鑓、長刀もちゃんと突き通り、弓、鉄砲も性能がよく、壊れないものがいい。
 武具について、選り好んではいけない。過ぎたるは及ばざるがごとしというではないか。人の真似はせず、自分の身体に釣り合い、手に合う武器がいいのだ。大将・兵卒ともに武器の好き嫌いはいけない。使いこなす工夫が大事だ。


■ノウハウ塾 第三回「体操内村が逆転銀を獲得した秘密」

体操個人総合。あん馬で2度落下、メダルはおろか入賞も絶望と思わせた内村選手が奇跡の逆転劇により、見事個人総合銀メダルを獲得しました。
 あん馬で失敗した折、「気分は落ちていたけど、いつも通りやろうと自分に言い聞かせました」という内村。
 しかし、それだけではたしてあの奇跡は呼び起こせたでしょうか。

 『五輪書』火の巻は、戦いをテーマに肉体面、精神面の弱点を克服し、あらゆるシーンで勝つためのノウハウが圧縮されています。
 内村選手が勝てたのは、失敗を即座に忘れ、気持ちを切り替えたことがひとつ。そして、個人の勝ち負けにこだわらず競技全体の大局に目を向けたことがその秘密だと思われます。
 これら、失敗をチャンスに変え、己に打ち克つ具体的方法を、いくつか武蔵に学んでみましょう。

一 山海の替え
 山海の意味は自分と敵の戦いで、同じことを何度も繰り返すことは愚策であるということだ。同じ失敗はまあ二回くらいはしょうがないとして、三回やるのはバカである。
 敵に策を仕掛けて一回目は効かなかったとしよう。これをもう一回やって見たとしても、最初程度の効果すらも望めないだろう。この場合全く別の手を不意に仕掛けそれでもダメなら、また違う手を出して見る。
 そういうわけで敵が山だと予想したら、海を出し、海と思ったら山を出す。これが兵法の本道だ。自分なりによく研究すること。

一 生まれ変わる
生まれ変わるとは、自分と敵が戦い混戦模様に陥り決着が付かない時、それまでの経緯を忘れて物事が生まれ変わったように、新しく生まれたリズムで勝利を得ることだ。
 生まれ変わるとは、常時敵と自分が不協和音を出していると感じたとき即座に心を一新し、全く別の方策で勝つことだ。集団の兵法でも生まれ変わるという戦術を認識しておきたいものだ。兵法の方法論を応用すればすぐさま理解できるだろう。よく考えて見なさい。

一 鼠頭牛首
 鼠頭牛首ということは、敵との戦いでお互いに細部にばかりこだわりあってしまい、勝負がもつれてしまった場合、兵法の道はいつも鼠頭牛首、そとうごしゅと唱えては、本当に小さなこだわりから、にわかに大きな視点が開け、小さなものから大きなものへと局面が打開されるのだ。
 これが兵法の心の持ちようである。常日頃から鼠頭牛首を心に念ずることが武士の心がけというものだ。兵法の集団・個人においてもこの心がけを忘れてはならない。よく心に刻みなさい。


■ノウハウ塾 第四回「やはり、先手必勝」

勝負の基本に「先手必勝」があります。体力温存、追い上げ、逆転の勝利…。
後から勝つ方法もありますが、やはり最初、初っ端を制することが何といっても有利です。敵が挽回しようと思っても、こちらもさらにがんばるわけですから。

武蔵は先手に三つのパターンがあるといいます。必ずしも、最初から遮二無二飛ばせばいいわけではない。頭をつかいなさい、と。そして、最初から敵の出鼻をくじき、相手に何もさせない…、ということも大事なポイント。これら二つのノウハウを今日は学びます。

一 三つの先手
 三つの先手がある。第一番目は自分から敵に仕掛ける先手。これを懸の先という。二番目は敵が自分へ仕掛けてくる待の先。三番目は自分も敵も同時にかかりあう、対々の先。この三つだ。どのような戦いのはじめであろうと、先手はこの三つしかない。先手しだいで、早くも勝ったも同然となるわけだから、これは兵法の第一手段といえる。
 先手の内容自体いろいろだが、まずそのときの状況判断を真っ先にし、敵の心理を見抜き、その上で当流の兵法に従って勝つわけだから、事細かに書き分けるつもりはない。

 第一番目、懸の先。さて仕掛けようと思うとき、まず静かに座っていて、突然立って急に襲う先手。心の上層部分を強く速くし、底の部分をいつもの通り残しておく、心の先手。また心を最も強くし、足の運びも常より速く、敵に接近するや否や激しく攻め立てる先手。さらに心を自在に遊ばせて、最初から最後まで一貫して敵を押しつぶす気持ちで心底強い心で勝つ。以上がいずれも懸の先というものである。
 第二番目は待の先。敵が自分にかかってきたら、構えず警戒せず弱そうに見せる。いよいよ敵が間合いに入ったら、突然飛びのき、転瞬飛び掛りそうな気配を見せる。このとき敵が一瞬ひるんだ隙を捉え一気に勝つのだ。これがひとつ。さらに敵がかかってきたら、自分ももっと強くなって出、敵のかかってくる拍子が変わる瞬間を受けて、即座に勝利を収める。以上が待の先の理論だ。
 第三番目は対々の先。敵が急襲してきたら、自分はむしろ静かに強くかかり、敵が間際になると見るや、一転して決死の構えとなる。これを見てひるんだ敵の隙を付き、即座に勝つ。また、敵が静かにかかってきたら、自分は軽快にテンポを上げてかかり、間合いに入ったら一当て当てて見て、敵の気色を読み力を込めて勝つ。これが対々の先の手である。
 これらは詳述が難しいので、このくだりを理解して、各自おおよその工夫をしてもらいたい。これら三つの先手の説明をしたが、時により場合により、いつでも自分からしかけられるわけではないが、できれば自分よりしかけ、自分のペースに持っていければいいものだ。先手についてはいずれも兵法の智力を得て、必ず勝てると確信すること。よく鍛錬しなさい。

一 枕をおさえる
 枕をおさえるということは、頭をあげさせないという意味である。
 兵法勝負の道に限って他人に自分を動かされて、後に付かされることはよくない。どんな場合も敵を自在に操りたいものだ。それで敵もそうしたいと思い、自分も同じ気持ちなのだが、他人の出方を読めない限りこれは難しい。兵法では敵が打つのを止め、突くのを抑え、組み付くのをもぎ離すという手がある。
 枕をおさえるという手は、兵法の正道を会得して敵にかかるならば、敵のどのような意図をも、敵がやり始めないうちから予測して、例えば敵が打つという、打つの「う」の字の頭を抑え、その後をさせないようにすることをいう。意図のしょっぱな、枕をおさえるのだ。敵がかかるという「か」の字をおさえ、とぶという「と」の字の頭をおさえ、切るという「き」の字の頭をおさえる。
 みな同じである。敵が技をしかけてきた場合、どうでもいいことは敵の自由にさせておき、重要なことはこちらがおさえ、敵にはさせないようにすること、これが兵法の専売特許だ。ただ敵のすることをおさえよう、おさえようとして後手に回ってしまってはいけない。まず自分自身どんな場合も、道にのっとって技を繰り出すうちに、敵も技をしかけようとする、そのしょっぱなを見抜いておさえ、どの技も殺し敵を自由にあしらえることが、兵法の達者であり鍛錬の賜物といえるのだ。
 枕をおさえるということをよくよく研究して見るように。


■ノウハウ塾 第五回「ここ一番を必ず制する秘訣」

受験、面接、オーディション、社運のかかったプレゼンテーション。人生には、「絶対に落とせない、ここ一番の大勝負」があります。
手のひらに人の字を書いて飲み込む、南無阿弥陀仏を唱える、深呼吸をして「必ず勝つ」と自分に言い聞かせる…。相手を倒すことよりも、まず弱気な己に打ち克つこと。その究極のセルフコントロールを生涯不敗の男、宮本武蔵に学びます。

肉体的な構え、精神的な構え、物の見方・捉え方。

ただひたすら「落ち着け、落ち着け」と言い聞かせるだけではなく、自分を突き放した、もう一人の自分が冷静に客観的にどこかでわが姿を観察している…と心にありありと描くこと。それができれば、どんな重要場面でも、もうとりこぼすことはありません。

一 兵法の心持ちについて
 兵法の道では、心の持ち方として、平常心と異なることがあってはならない。平常時も戦闘時も少しも変わることなく、心を広くまっすぐに持ち、強く緊張せず、少しも弛緩せず注意がいずれかに傾かないよう心の真ん中に置き、心を静かに流れさせ、その流れる瞬間瞬間にも、流れが止まらないように充分注意すべきだ。

 身体が制止しているときも、心は静止せず、身体がめまぐるしく動いているときも、心は少しも動かず、心は身体に引き摺られず、身体は心に引き摺られない。
 心に用心して、身体には用心せず心に足りないものをなくして、心を少しもあまらせず、心のうわべは弱くとも、心の底の部分は強く、心を他人に読まれないようにして、身体の小さなものは、身体が大きいことによる長所短所をすべてわきまえ、大きなものは小さなもののすべてをわきまえるようにする。身体が大きかろうが小さかろうが、心をまっすぐにもち、他人よりわが身がすぐれているなどと思わない心をもつことが大事だ。

 心の中の雑念を払い、広々とさせ、そこへ智恵を置くのだ。智恵も心もひたすら磨き、向上させるよう努めなさい。智恵を研ぎ澄まし、天下の利非をわきまえ、物事の善悪を知り、あらゆる芸能、あらゆる道に通じ世間の人にまったくあざむかれることがなくなった後、兵法の智恵が心に宿る。
 一般の智恵と比較し、兵法の智恵は特に性質が違っているものである。戦闘の場というものは、万事急展開するものだが、この兵法の道理を極め、いかなる時も動じない心というものをよく勘案すべきである。


一 兵法の身体の構え
 身体の構えは、顔をうつ伏せず、仰向かず、傾けず、ゆがめず、目を見開かず、額にしわを寄せず、眉と眉の間にしわを寄せて、目をキョロキョロ、パチパチせず、少し細めて、おだやかに見える表情で、鼻筋はまっすぐに、心持ち下あごを前に出すようにする。

 首は後の筋をまっすぐにし、うなじに力を込めて肩から胴体は左右のバランスを均等に保ち、両肩を下げ、背筋はまっすぐに、尻は突き出さず、膝からつま先まで力を入れて踏ん張り、腰はかがまないように、下腹をはり、脇差のさやに腹をもたせかけて帯がゆるまないようにすることを「くさびをしめる」といっている。
 一般的に、兵法の構えの修行では、普段の構えを兵法の構えとし、兵法の構え
を普段の構えと心得ることが大事である。よく工夫してみることだ。


一 兵法の物の見方
 物の見方は、大きく広く見るようにするのだ。
 心眼で見る「観」と、目で見る「見」の二つの見方があるが、観の目で強く、見の目で弱く見、遠いところを近くでありありと感じるように見、近いところは遠くから大局をつかむように見るのだ。これが兵法の見方だ。
 敵の太刀筋を悟り、敵の実際の太刀は全く見ないことが、兵法のツボである。工夫することだ。
 この見方は、一対一の小さな兵法にも、集団での大きな兵法にも、両方応用できる。また目線はまっすぐ前を見たまま、左右の視野をなるべく広げて、両脇を見ることも大事だ。
 こうしたことは緊急時にはなかなか実行できないものだが、この書付を諳んじ、日常生活の中で、この見方を実行し、いついかなる時もこの見方をキープできるよう、よく鍛錬しなくてはならない。

2008年08月18日 23:09

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