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『現代語訳 歎異抄』発刊! 【言の葉庵】No.31

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┣┫OW┃O             地獄は一定すみかぞかし 2008.8.28
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 言の葉ブック、どんどん読める古典再生作品、第八作『現代語訳 歎異抄』
が発売となりました。「善人なをもて往生す」「親鸞は弟子一人ももたず候」
「人千人殺してんや」「地獄は一定すみかぞかし」。逆説に満ちながらも、
人の魂をぐさりとえぐる至言の数々。『歎異抄』は時代を越え、宗教の一分
野をもはるかに越える不朽の名書です。仏教や聖人と聞くとひいてしまうあ
なたにむしろ読んでもらいたいと思います。
 秋の言の葉講座、装いも新たに全7講座10月期スタートです。『南方録』
『山上宗二記』『風姿花伝』『葉隠』など、秘伝書にこめられた深い道理と
達人の心のはたらきを豊富な資料をもとに読み解いていきます。朝夕の涼風
に、がぜん学習欲が湧いてきませんか?!(涼しくてよく眠れるのですが…)


…<今週のCONTENTS>…………………………………………………………………

【1】新刊情報               『現代語訳 歎異抄』発刊!
【2】言の葉講座         秋のカルチャー新講座。10月期スタート

…編集後記…
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【1】新刊情報               『現代語訳 歎異抄』発刊!
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 浄土真宗の聖典。親鸞の語録を玉のように散りばめた宗教書の最高傑作『現
代語訳 歎異抄』(PHPエディターズ・グループ)
をお届けします。全国書店にてお求めいただけます。

「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」。これは、悪人正機説・他力
本願を説いた親鸞のもっとも有名なことば。生まれつき才能・素質をもち、か
つ超人的な努力と難行修行の末はじめて悟り、往生が叶うとした、従来の仏教
観に親鸞は敢然と「否」をつきつけます。われらのごとき煩悩具足下根の凡夫、
そしてなによりも極悪非道にして地獄に落ちるしかすべのない哀れな者をこそ、
阿弥陀如来はあふれる光明に一人残らず抱き取り、かならずや極楽に往生させ
てくれる…。ただ必要なのは、弥陀の本願を信じて唱える念仏のみ。南無阿弥
陀仏、なもあみだぶ…。

 『歎異抄』は、真宗教徒、仏教徒だけが読む教義書では決してありません。
「なぜ生まれてきたのか(こんな苦しい娑婆に)」「死んだらどうなるのか(悪
いことをすれば地獄に落ちるのか)」「どのように生きていけばいいのか(善を
積めば救われるのか)」を、誰にでも理解できる、やさしいことば、真実のこ
とばで綴った「智恵の書」「慈悲の教え」なのです。著者とされる親鸞直弟子
の唯円の文章はまことに美しい。徒然草、方丈記とならんで中世三大美文と称
されています。しかしそれは唯円の文才と修辞の賜物ではなく、あくまで師親
鸞の生前のことばを一言も聞き漏らすまい、書き残すまい、と魂をけずるよう
に一字一句筆写したもの。読めばわかりますが、全文が親鸞のことばをそのま
ま写し取ったもの。唯円の創作、脚色の跡は微塵も感じられません。そのくら
い真に迫る「師と弟子の対話」が『歎異抄』にはみごとに息づいています。

 さて、『歎異抄』にはいったい何が書かれているのか。また、何を伝えんと
したものか。その主題を本著「作品の案内」からご紹介しましょう。

本書の主題

 最初に、本書の主題ともいうべき、「信仰の告白」について述べてみたい。
 偉大な宗教家の事跡を順次たどることよりも、親鸞という一信仰者の魂の声
を聞くことこそ、『歎異抄』の本質を知るもっとも近道だと思うからである。
 親鸞の略歴と本書の概要については、主題を確認した後、あらためてご紹介
して行こう。

 さて、本書が宗教書の一分野を越え、また世代・性別・職業、国籍をも越え
て、多くの読者に熱烈に支持される理由は何であろうか。現在一般的には、日


本仏教思想の極致を示す書と評価され、

・念仏の本義を明らかにする
・親鸞の信仰が、やさしい和文で読める
・悪人正機説の解示
・親鸞と門弟の真に迫る対話
・信心による正しい生き方を示す

 などが、その魅力としてあげられている。
専修念仏、他力本願の教義がやさしい言葉で説かれていることもひとつの魅力と
いえようが、一読して胸に迫るのは、なによりも親鸞の生の言葉、迫真の話法で
はないだろうか。ただ口で熱く語るだけではなく、脇目も振らず相手の心の深奥
へ、おのれの全存在を叩き込んでいくような言葉のかたまり。信心のほとばしり

これこそ本書の生命といえよう。

 師親鸞の告白とその声音が、直弟子であった唯円の耳の中で、師の没後二十年
以上が経っても、なお鳴り響き、鳴り止まないのだ。そして『歎異抄』がなる。

 ここで本書より、信仰の告白を主題とする二つの段落をご紹介したい。

 中国後漢時代に「疾風知勁草(しっぷうにけいそうをしる)」という成語がある

嵐の過ぎ去った後、はじめて本当に強い草木がわかる、との意。危難こそ人の真
価を問う、とも言い換えられよう。国、時代を問わず、すべての宗教が負わねば
ならぬ宿命に、弾圧と迫害がある。専修念仏の禁止、法然親鸞両人流罪が処せら
れた「承元の法難」を皮切りに、この宗派はいかに多くの弾圧を、しかも長きに
わたって受け続けてきたことか。また、個人の信仰に目を転じた時、本願他力の
信仰はいかに多くの異義・邪説にさいなまれ続けてきたことか。
 信仰は危難に打ち克つことで、その光を増す。絶体絶命の信仰の危機。その瞬
間、親鸞の告白がいかなる無碍の光を放ったか。その例を第二条、第九条から見
てみよう。

〔第二条〕
 親鸞が晩年、布教の基盤関東を去り、京都へ戻った後、関東の信者の間に様
々な異義が起こりだした。親鸞はこれを収拾し、正しい信仰を伝えんと、息子
の善鸞(ぜんらん)を名代として関東へ派遣。しかし善鸞は異義を正すどころか、
その片棒を担ぎ、挙句の果てに、
「父の教えた念仏は間違いであった。実は父が深夜、私ひとりにだけ伝えた秘
密の往生の方法がある」
 などといい、関東の同心衆は大混乱に陥ってしまう。
「かくなる上は、聖人にじかにお会いし、まことの話を聞かずばなるまい」
 と、主だった門弟たちがこぞって上洛し、親鸞に詰め寄った場面が、冒頭の
「おのおの十余ヶ国のさかひをこえて」
 である。親鸞の返答いかんによっては、これまで築き上げてきた念仏他力の
法門が一挙に水泡と帰しかねない。一触即発、凄まじい緊迫感に満ち満ちた場
である。
「秘密の法を知りたくば、比叡山の立派なお坊さんに聞かれよ」
 と淡々と語り始めた親鸞の言葉は一片の申し開きもない、恐るべき純粋な信
仰の告白であった。

「念仏とは何か、まるで知らぬ」
「法然聖人に騙され、地獄に落ちたとしても後悔はしない」
「もとより地獄こそわが住みかなり」
「阿弥陀様、お釈迦様、善導大師、法然聖人、親鸞は、そろってみな嘘つきか」
「私の信心はこの通り。捨てるのはみなさまの自由」

 旅塵と疑惑にまみれた同朋衆の心に、再び消えることのない信仰のまばゆい
光が満たされたことは疑いもない。

〔第九条〕
 信仰者が遭遇する最大の危機、心の支えの瓦解をつづった段落。
 個人にとっては信仰の消滅、宗門にとっては教義の崩壊という最大の試練の
場が描かれる。親鸞に心酔、敬服する若い門弟唯円が、思いつめた顔で師のも
とを訪ねる。
 そして告白した。
「みなさま、念仏は嬉しいのでしょうか。浄土へ早く参りたいと思うのでしょ
うか。私は今日まで一度もそんなことを感じたことがありません」
 ややあって、静かに口を開いた師の言葉は、
「よくいってくれました。実は私もおまえと同じ心。これまでずっと不審に思
っておったのです」
 であった。キリスト教徒であれば、「神を信じない」と告白する信者に、牧
師が「私も信じない」と応じるようなもの。恐るべき、不信仰の告白ではなか
ろうか。しかしこの後、人間のもつ煩悩自体によりそのように感じられるとい
うこと、またむしろそうした者こそ救われるということが説かれていく。
 しかし、この何をも恐れず、どこまでも偽らぬ師弟間の告白こそ、無垢の信
心の証ではないだろうか。その瞬間に阿弥陀仏の目もくらむほどの光に包まれ、
師弟二人はすでに救済されている、と読むべきであろう。


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【2】言の葉講座         秋のカルチャー新講座。10月期スタート
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 能狂言・茶道・武士道。中世の日本精神文化を初歩から学ぶ”言の葉講座”。
長いものでは、今期で5期目(東急BE・能狂言講座)となりますが、全国カルチャ
ー10月期講座、新しいテーマでそれぞれはじまります。各教室、受講生のみな
さまから寄せられるご質問、ご要望をもとに、よりわかりやすく、よりタメに
なる、をめざして講座内容の充実をさらにはかりました。今回は、会員の方で
なくてもご参加いただける「一日体験講座」「一般公開講座」もご用意。学び
の秋。ぜひ新しい世界にチャレンジしてみてください。

〈東京池袋・池袋コミュニティ・カレッジ〉

1.幽玄の美、能の世界へ【一日お試し講座】※上のページから「心と身体の健康」をクリックしてください。

どなたでもご参加いただける、単回お試し講座。難しい…と思われがちな能の
見方、楽しみ方、そしてここ一番のみどころをわかりやすく、ダイジェストで
お届けします。映像資料豊富。
日時 2008年9月17日(水) 13:00-14:30
受講料 会員\3,150 一般\3,465

2.能と世阿弥入門 ―秘すれば花。『風姿花伝』を読む※上のページから「心と身体の健康」をクリックしてください。

前期三回・後期三回。どなたでも(非会員可)ご参加いただける公開講座です。
600年以上の歴史をもつ世界無形文化遺産、能の魅力をあますところなくレク
チャー。名著『風姿花伝』講読あり。
日時 2008年10月15日(水)~ 毎月第三水曜日13:00-14:30
受講料 6ヵ月6回 会員、一般 15,750円/3ヵ月3回 会員、一般 8,190円

3.千利休と侘び茶の世界 ―和敬清寂。『南方録』を読む※上のページから「心と身体の健康」をクリックしてください。

日本人の生活文化のほとんどすべてが、安土桃山時代、千利休により大成さ
れた”茶の湯”から生まれています。茶道の聖典『南方録』を読解しながら、
和の心、わび茶の精神を学びます。
日時 2008年10月8日(水)~ 毎月第二水曜日13:00-14:30
受講料 6ヵ月6回 会員、一般 15,750円/3ヵ月3回 会員、一般 8,190円

4.日本人の心、武士道 ―死ぬことと見つけたり。『葉隠』を読む※上のページから「心と身体の健康」をクリックしてください。

「武士道というは、死ぬことと見つけたり」。その本当の意味は、人として
なすべきことをなし、最大限努力して見事に生涯を生き納めること。中世型
武士道に日本人の心の原風景をたずねます。
日時 2008年10月22日(水)~ 毎月第四水曜日13:00-14:30
受講料 6ヵ月6回 会員、一般 15,750円/3ヵ月3回 会員、一般 8,190円


※1.~4.の講座の問合せ、申し込みは下記まで。
池袋コミュニティ・カレッジ
〒171-8569 東京都豊島区南池袋1-28-1池袋西武イルムス館8・9F
Tel.03-5949-5487


〈東京渋谷・東急セミナーBE〉

5.能と物語文学・伝説
10月にて五期目を迎えるロングラン講座。今期は、西行法師、景清、鉄輪など
の伝説、伝承が、能の中でどのように「物語化」されていくのかを実証します。
もちろん、初心者の方にも充分理解していただけるようにDVD・ビデオ等の資料
もご用意。
日時 2008年10月7日(火)~ 毎月第一火曜日13:00-14:30
受講料 6ヶ月全六回 会員\16,380

※5.の講座の問合せ、申し込みは下記まで。
東急セミナーBE渋谷
JR渋谷駅 渋谷東急プラザ7・8F
Tel.03-3477-6277


〈名古屋栄・中日文化センター〉

6.はじめて見る能狂言

能のストーリー、演技、役者、音楽…。世界唯一の総合芸術と呼ばれる能の基
本をひとつひとつ楽しみながら学んでいく講座。超初心者の方でも、いわゆる
「通」なみの楽しみ方を体験していただける、充実の入門講座です。

日時 2008年10月2日(木)~ 毎月第一木曜日13:00-14:30
受講料 6ヶ月全六回 会員13,860円

7.千利休わび茶の心 『南方録』『山上宗二記』を読む

千利休の秘伝書『南方録』を読む講座。今期、最終章「滅後」にて長大な全編
を読了します。後半の3回は、『山上宗二記』にチャレンジ。東山時代の名物茶
器の歴史と珠光直伝のわぴ茶の極意を学びます。

日時 2008年10月2日(木)~ 毎月第一木曜日15:30-17:00
受講料 6ヶ月全六回 会員13,230円

※6.~7.の講座の問合せ、申し込みは下記まで。
名古屋栄・中日文化センター
名古屋市中区栄 中日ビル
フリーダイヤル 0120-53-8164


……………《編集後記》………………………………………………………………

下村観山の名画「弱法師」。六曲一双の大画をはみ出す筆勢で描かれた老梅の
一樹。その木陰で西に向かって合掌する盲目の法師が描かれます。袖には花ひ
とひらの施行を受けて。背景は一面の金泥。西方浄土、東の門を出た金色の光
が、彼岸中日に天王寺西門、石の鳥居を満たし、盲目の少年の心眼にありあり
と映ったものです。
 最晩年の友枝喜久夫が、ほとんど視力を失いながらも少年に戻り、舞い納め
た伝説の舞台が「弱法師」。本年は庵主の能の会、百周年。その秋の大会で
「弱法師(素謡)」にチャレンジします。節も拍子もよろよろ頼りなく、まさに
弱法師。いかなることになりゆくことでしょう…。(言)

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 皆さんの声をお待ちしています。Good!の投稿は次号にてご紹介いたします。
 http://nobunsha.jp/nobunsha.html
 
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■ 編集長 水野 聡 mizuno@nobunsha.jp 
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2008年09月03日 21:30

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